鼻うがい
日本国民の往来や外食が大々的に喚起されて、賑やかな雰囲気に沸いたのも束の間。年末年始を控えて自粛ムードが広がってきた。揶揄するつもりはないけれど、アクセルやらブレーキやら、何を信じていいのかわからない。欧米比較で二桁違う感染者数でも、日々の増減比較が実況中継されて不安になる。PCR検査がビジネスになるくらい普及して、半年前と比較したら3倍増の検査をしているのだから、感染者数が増えるのは当然だとも思う。
されど、人からの目だけは気にしないと生きにくい。マスクの効能は、もちろん感染予防にあるのだが、半分は人の目を避けるためにしているような気もする。
日本人の感染者数が低位で維持できているのは、手洗いうがいの習慣に加えて、清潔な生活環境のことがよく話題にのぼる。マスクの有無は人目につくけれど、手洗いとうがいは自分ひとりのときにするもの。自衛手段が片手落ちになっていないか、ちょっと反省してみるといいのかも知れない。
緊急事態宣言が解除された6月ごろ、鼻の調子がおかしくなって地元の耳鼻科に駆け込んだ。予約方法に始まって、待合室から診療室への誘導も含め、この時代に沿った見事な設えがされており、偶然にも高校の後輩だった女医さんも大型ゴーグルで完全防備。
ひととおり、診察が終わって「そんなに心配しなくていいでしょう」と抗生剤を処方され、診察室の外を見ると鼻腔洗浄のタンクが並んでいた。中学生のころ、やったことあるなと思い出しながら、洗浄を頼んでみると現在使用停止中という。そこで進められたのが自宅でできる「鼻うがい」。この時代、鼻うがいも在宅ワークが旬なのだ。
ネット通販で、ボクが入手したのはポンプ式。0.9%の生理食塩水を40度くらいのお湯に溶いて、細いホースで鼻の奥へと流し込む。プールで溺れたときのような違和感を覚悟していたけれども、自分で調整できるので惧るるに足らず。流し込んだ水と一緒に細切れの体液のカスがぬるっと出て、そのあと鼻がスカッと通るのはなかなかの快感である。
ちょっと調べてみると、鼻うがいには、感染予防、花粉症対策に加えて、集中力アップの効果がある。極めつけは、鼻づまりのせいで口呼吸が習慣化すると、前頭葉に慢性的な負荷がかかり、やがては認知症の原因にもなりうるという学術論文もある。やっぱり鼻は通っているほうがいい。
気がつけば、還暦まであと3年半。もろもろ迫りくるリスクへの自衛手段として、「鼻うがい」を実践するようになった今日この頃なのであります。